日銀は、「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)」と「オーバーシュート型コミットメント」を決定!
9/21の金融政策決定会合で日銀は、これまでの世の中に出回るお金の「量」から、長期と短期の「金利」操作に政策変更した。
具体的には、「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)」と「オーバーシュート型コミットメント」を行う決定をした。
「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)」とは、長期金利と短期金利差を日銀がコントロール
今年2月、日銀がマイナス金利を導入したことで短期金利がマイナスになっただけでなく、長期金利(10年国債金利)もマイナスとなり、日銀の思惑とは裏腹に金融機関の経営を圧迫することとなった。
日銀はマイナス金利を導入することで、アメリカの金利引き上げとの政策方向の違い(9/22未明の「FOMC」で金利据え置きを決定)により、為替を円安ドル高に誘導して(表立って円安には、誘導できないが)輸出企業の業績をサポートして、景気を上向かせようとしたが、思惑は外れ「マイナス金利」導入直後から円高ドル安に振れてしまった。
そこで、今回は、金融機関を考慮して「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)」を実施するとして、金融機関の経営に配慮したわけです。
「オーバーシュート型コミットメント」は、消費者物価指数(CPI)の上昇率を安定的に2%する公約
また、「オーバーシュート型コミットメント」は、本来、日銀は2年で消費者物価指数(CPI)の上昇率を2%にすると言ってきたわけですが、もうとうに2年が経過してしまっているので、これからは安定的に物価上昇率が2%を超えたと判断できるまで、異次元緩和を継続すると公約したわけです。
この公約によって、異次元緩和が長期間にわたって続くことで安心感を与えて、人々の意識を上向かせて、景気を浮上させようとしているわけです。
「オーバーシュート型コミットメント」によって、改めて物価上昇を追及
「オーバーシュート型コミットメント」によって、日銀は、改めて人々に将来的に物価上昇すると思わせることで景気を浮上させようとしているが、物価だけ上がって所得が上がらない状況では、なかなか景気が上向かない。
健康保険や年金の掛け金の増額など社会保険料の負担増で、人々の気持ちはなかなかお金を使う方向に向かない。
物価は円安や原油などの資源価格の上昇によって、日銀の思惑通り2%を安定的に維持するところまで行くことも考えられるが、今のままでは所得の上昇が物価上昇に追いつかないことが最も懸念される。
所得の上昇に向けた取り組みは、農業改革や働き方改革などの構造改革の進展次第になるわけだが、現状は時間がかかりそうでスピード感に欠けると言わざるを得ない。
「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)」によって、金融機関の運用難を緩和
日銀は、「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)」によって、「マイナス金利」の副作用による金融機関の運用難を和らげる方向に舵を切った。
「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)」は、長期金利(10年国債金利)をマイナス金利にならないようにして、0%程度に維持しようと言うものであるが、長期金利のコントロールはどこの国もおこなった事がない。ましてや、長期金利のコントロールは出来ないといわれている。
日銀は、その不可能に挑戦しようとしているとも言える。失敗した時の事を考えると、何が起こるか恐ろしい気がする。
「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)」の副作用は?
ところで、現状のフラットなイールドカーブを長期金利をアップさせて短期金利との金利差を広げる「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)」の副作用はないのだろうか?
第一には、長期金利が上がると言うことは、アメリカとの金利差が縮まることになり、円高圧力がかかることになり、日本経済には逆風となる。
第二は、日本の人々に直接関係することであるが、長期金利が上昇すると住宅ローン金利が上昇することになり、ただでさえ、住宅価格が人件費や資材価格の高騰で販売が減少ぎみになっているところに追い打ちをかけることになる可能性がある。
マイナス金利で史上最低金利となった住宅ローン金利が上昇することになれば、せっかく盛り上がった住宅ローンの借り換えにも水を差すことになる。
日銀にとって、今後の金融政策は、進むも戻るも難しい判断となる。